統一戦線義勇軍

02.20―チェイニー米副大統領訪日に伴う対米関係の提言書―

本日、チェイニー米副大統領が訪日する。これにあわせ、安倍首相にその真意を質すため、2月19日、一水会と統一戦線義勇軍が構成する「戦争ビジネス屋チェイニーの野望を見抜き、日本の真の独立を目指す民族派有志の会」が内閣府官房を訪れ提言書を手渡した。

提言の内容でも触れているが、今回のチェイニー訪日は、日本の対米従属を完成させる決定的な出来事になりかねない。このことを広く伝えるため、ここに内閣府に渡した提言書全文を掲載させて頂く。


提言書を読み上げる針谷議長
後ろは山口同志

はじめにヤルタ・ポツダム体制打倒を掲げ、日本の民族派運動を担う我々は、来る二月二十日から三日間に及ぶチェイニー米副大統領訪日に際し、その本義を明らかにさせるため、安倍晋三内閣総理大臣に対米国の外交政策における提言を謹んで申し上げる。

今回のチェイニー訪日の目的は、表向きにはイラクに展開している航空自衛隊の輸送支援に対する米国側の感謝の意の表明や、イラク復興に向けた経済協力の継続・強化の要請にあるとされている。また、先日ブッシュ米大統領が発表したイラク新政策や、北朝鮮及びイランの核問題への対応などの意見交換がなされると伝えられている。

しかし今回の訪日の真の目的は、日本国民の血税を奪取し、いつ終るとも知れないイラク侵略戦争において、日本の恒久支援体制を構築させることにこそある。具体例についてはこれから説明させて頂くが、安倍総理におかれては、この点をしっかりと肝に銘じて交渉に応じて頂きたい。

さて、米国はイラクの治安を回復させるため、二万人以上の米軍兵士をイラクヘ増派することを決定した。さらに、今年十一月までに治安権限をイラクに移譲することと、経済を復興し雇用を創出させることなどに重点を置いた「イラク復興新予算」(約千四百三十億円)の成立を目論んでいる。これらの企ては、チェイニーをはじめ、俗に「ネオコン」と呼ばれている好戦的な一派の主導により決定されているものだ。

ただし、昨年十一月に行われた米中間選挙では、ブッシュのイラク政策が否定され共和党が惨敗、野党・民主党が多数を占めたことにより、同予算案をそのまま全額成立させることは難しい。また、米国内にもイラクへの占領統治による疲れが蔓延している。そうした厳しい状況があるにもかかわらず、ゲーツ米国防長官は、イラクのみならずアフガニスタンへも兵力を追加派遣する意向を発表した。

このような時期に副大統領であるチェイニーが態々訪日する理由を考えれば、その魂胆はすでに明白といえよう。しかも、あろうことかチェイニーは、資金援助の要請ばかりか、自衛隊のアフガニスタン派遣要請まで提示してくるのではないか、とすら囁かれている。我々は、先般の自衛隊のイラク派遣に真っ向から反対してきた。それは、米国の大義なきイラク侵略に賛同しかねるという政治的立場からである。そもそも自衛隊のイラク派遣には、大義など存在しない。このことは、何よりもイラクへの侵略の根拠としてきた大量破壊兵器保有やアルカイダとの関連性を、米国自身が否定したことによって、一層明確になったはずである。

また、日本においても政治家に限らず広く国民の意識も、イラク侵略戦争開戦時の判断に疑問を示している。閣僚クラスの中にも当初より米国の手法に批判的な立場が存在したが、これに米国側は不快感を抱いており、日本側はそれらの払拭の意味を込めて、改めてイラク政策への支持を確認する見通しだともいわれている。だが今こそ米国の不義を、同盟国の首相として、安倍総理は直接、米国側に指摘する責務があるのではないだろうか。我々は、再び自衛隊のイラク派遣と同じ過ちを犯すべきでないと強く訴える。

国内では依然強い「米国勝ち馬論」だが、今、米国の世界戦略は各地で破綻し続けている。アフガニスタンでは治安の急速な悪化が始まり、NATOが駐留兵士の増派を決定した。先ほども述べたように、米国がアフガニスタンへの大量増派を目論んでいる一方で、フランスやイタリア、トルコなどのNATO加盟国は、自国兵士の増派に消極的姿勢を取っており、足並みの乱れが顕著である。

そのような地域に、自衛隊を派遣しなければならない理由は、果たして存在するだろうか。そもそも、集団的自衛権の行使に限らず、日本は軍隊を保持しないと憲法に明記されている。そうなると自衛隊は、ジュネーブ条約に規定されている捕虜の扱いを受けられるのか、という問題も存在する。それ以前に、憲法解釈自体が曖昧にされている状況下で、それを無視して戦地に自衛隊を派遣することがどのような弊害をもたらすか、我々が指摘するまでもないだろう。もしも自衛隊員が戦地で命を落とすようなことがあれば、それは犬死である。自衛隊員にそのような屈辱を味わわせてはならないと強く訴える。

米軍再編問題における日本の負担は、売国行為である次に在日米軍の基地問題についての要望を述べたい。

在日米軍再編の全計画については、すでに昨年四月二十五日、ローレス米国防副次官が日本側負担を「約三兆円」と明言している。米軍基地を抱える地元市町村の負担を考えれば、計画の早期実現を狙う必要があることは十分理解できる。しかし、独立国であるはずの日本が、米国側の提示した金額に唯々諾々と従うとなると、話はまた別だ。

しかも、グアムに建設される施設の整備費一〇二億ドルのうち、日本が約六十一億ドルを支出しなければならないという。自国領であるグアムに移転する米軍に、なぜ日本が七千億円もの費用を提供しなければならないのか。国民一人当たり約二万三千円にも相当する膨大な額が、どのような内訳で負担されるのか。国民に対してきちんと説明すべきである。

これは、米国が得意とする言いがかりに近い過大要求だ。恐らくは米国も最後には若干の妥協をして、日本側に折れた格好を取って見せるだろう。初めから三兆円や七千億円を奪取できるとは思っていないはずだ。金額を吊り上げて、少しでも多くの移転費を日本から吸い上げようという魂胆だと見るべきではないか。それでも、米国の言いなりになっていては、いつまで経っても金をむしり取られる一方だ。ここは一旦、決裂を覚悟してでも日本の国益を守り通してもらいたい。

日米地位協定では駐留米軍・兵士のための施設の提供や経費の負担を規定しているものの、撤退費用まで負担するという規定はどこにも存在しない。この法的根拠がないに等しい「貢物」を合法化させるため、「在日米軍再編特措法案」を制定するというが、これは国を売る行為であるとは思わないのか。

この資金は、移転先の居住地区やショッピングモールの整備などに用いられるとされているが、とんでもない話である。そもそも、グアムは地価が日本に比べて安いが、ここまでの金額が必要なのかも疑問である。これでは米国にいわばODA援助をするようなものだ。しかもこの「貢物」は、あくまで米軍の資金という格好になり、使用の内訳の明細は一切日本側には不明である。にもかかわらず、易々と先方の言い値を払うべきなのか。

チェイニーの訪日によって対処法を制定するようなことになれば、「日本は小突けば法律を作ってでも面倒を見てくれる」という認識がまかり通り、悪しき先例を残すことになる。また、今後在日米軍が自国に帰還するたびに、「日本側が資金援助をする」ことが当たり前となってしまいかねない。北朝鮮や中国を相手に、必死の外交を行うためにも、まず同盟国に対して毅然とした態度で臨む姿勢を貫かなければ、相対的に日本の重みが沈下していく一方ではないだろうか。

日本は米国の植民地ではない。これほどの侮辱を受けてもなお日本政府は屈従を続けるのか。「美しい国」に向けて、目を覚まして頂きたい。

米軍再編を行うのは米国の事情であって、日本の問題ではない。欧州には一九九〇年時点で約三十一万人の米軍兵士がいたが、この十五年間で約十一万人に減り、今後五年から十年のうちに現在の駐留陸軍六万二千人(うち駐独が五万八千人)を二万四千人にまでに削減していくとされる。韓国も二〇〇八年までに駐留米兵を二万五千人にまで削減し、現在四十一ある米軍基地を十七に統合、総面積を現在の三分の一に縮小することが昨年、最終合意され、西半球では約二万人から一九〇〇人余と、実に九割も減っている。ところが、日本の駐留米兵数を見てみると、九十年時点と比べれば一万人以上削減されたものの、横須賀を本拠地とする第七艦隊の海上勤務要員を含めると在日米兵は五万一千人となり、依然多くの人員が駐留している。

さらに特筆すべき問題は、米軍が自衛隊との軍事施設などの共同使用を進めており、米軍に提供している基地面積は八十年代の約二倍になっているという現実である。まさしく日本だけが、世界的に見ても突出した役割を押し付けられる格好になっている。

さて政府は、米軍を受け入れることになった市町村の意向を尊重するというが、結局のところ一方的に通告し、強制するだけではないか。受け入れ地の意向を米国側にも伝えているのか、甚だ疑問といわざるを得ない。原子力空母配備に関する問題で、松沢成文神奈川県知事は米国側の譲歩の可能性を捨てず、国に徹底的な交渉を求めてきたにもかかわらず、外務省は俎上にすら上げなかったというではないか。これでは何のために日米交渉を開くのか、全く分からない。

そもそも、全国百三十五カ所の米軍基地は、日本の主権侵害であるばかりでなく、米兵による事件・事故や環境破壊などの直接の被害を生み出し、街づくりの大きな障害ともなっている。基地を抱えている多くの自治体では、基地が存在するがゆえに産業が育たず、基地収入と米兵相手の商売への依存が構造化してしまっている。これは、地方の自立を謳った美しい国には程遠い施策であるといえよう。

自衛隊を米軍の駒にしてはならない今更言うまでもないが、アジア地域における在日米軍再編の狙いは、米軍と自衛隊が一体となって地球規模で出撃できるようにすることにある。そのために日米の司令部の併存、基地の共同使用、相互運用などの軍事一体化が進められており、米軍の世界戦略に日本が組み込まれる懸念も高まっている。

「国際貢献」の名の下、米軍と一体となって地球上のどこにでも軍事力を公然と行使できるようになることに、我々は強い危機感を覚えている。

先ほど触れたグアム移転問題についても、米政府内には「将来の日本(自衛隊)のためのものだ」とする声もあるという。これはグアム基地を米軍と自衛隊の共同訓練に用い、自衛隊を米軍の後方支援体制の中に組み込む動きといってよい。日本国民の命を守る自衛隊が、他国によって勝手に将棋の駒のように使われようとしているのだ。こんなことがあってよい訳がない。強く再考を促す。

防衛庁から防衛省に格上げされ、ようやく米国と対等に意見交換する下地ができた。ところが、政治力の強化とは裏腹に、米軍への依存を強めていては国防もおぼつかない。

先日ブッシュ大統領は、「イランがイラクでテロ行為を行っている」と発表し、物議を醸した。この発言はイランに侵攻するための橋頭堡であり、「中東」大戦争の布石である。イラク侵略戦争前の報道を思い出せばすぐに分かることだが、当時のイラク・フセイン政権には大量破壊兵器もアルカイダとの繋がりも一切なく、また米国自身それらの存在を証明できなかったにもかかわらず、「妄想」だけで侵略を開始し、日本も「支持」するという重大な過ちを犯してしまった。

今回、アフガニスタンへの自衛隊派遣を行えば、いずれ開始されるであろうイランとの戦争に、日本が巻き込まれてしまう可能性も高くなる。イラクでは「復興支援」という名目での派遣で済んだが、今回は戦闘部隊つまり「米軍の傭兵」としての派遣になるかもしれないのだ。

その際、この地域で八割から九割を賄っているといわれている日本の石油調達が、安価でスムーズにいくとは限らない。エネルギーの確保も国防の一翼を担う立派な戦略である。いざ戦闘になったら、エネルギーはどこから確保するつもりなのか。無用な争い事に首を突っ込み、進んで火中の栗を拾うようなことは慎み、好戦ブッシュを諭すよう要求する。もとより、エネルギー・安全保障・生存権を無闇に他国に依存する姿勢は、自立した美しい国の建設を目指すものと程遠いことを指摘しておかなければなるまい。

「死の商人」チェイニーのビジネスの片棒を担いではならない。

チェイニーは、「ハリバートン」というペンタゴンと定常的に仕事をしている石油サービス・建築企業の最高経営責任者であった過去を持ち、現在も年間相当額の報酬を受け取り続けているという。こういう戦争をビジネスにするような者の手先に乗ることは、我が国の古来からの八紘一宇という理想とは相容れないのではないか。

現在の朝鮮半島問題は、北朝鮮の暴挙も許しがたい問題であるが、これが同時に東アジアにおける米軍の駐留に根拠を与えてしまっている。それこそ米国の思う壺で、再編費や軍資金を稼ぐため、米国が意図的に緊張を高めている側面は否定できない。事あるごとに日本に対する戦争体制の強化を要請し、北朝鮮など東アジアの緊張を利用しつつ、日本からMDや米軍基地移転のさらなる費用をせしめようとしているのだ。日本にMD構想の資金援助を幾度となく持ちかけたのは、米国の子分であるイスラエルを、イランなどのイスラム諸国より飛来する弾道ミサイルの脅威から守るためである。

チェイニーは東アジアの緊張を利用し、日本国民の生命を危険に晒してさらなる巨利をむさぼろうとしている戦争ビジネス屋である。断固としてこの本質を見極め、外交交流をとって頂きたい。

以上、右提言をさせて頂く。

戦争ビジネス屋チェイニーの野望を見抜き、日本の真の独立を目指す民族派有志の会

一  水  会
  統一戦線義勇軍

平成十九年二月十九日

内閣総理大臣
  安倍晋三殿